白い海を辿って。
「ありがとう。会ってくれて嬉しかった。」
『俺も。明日実の家族に会えて良かった。』
今日初めていつものくしゃっとした柔らかい笑顔を見れて、トクンと胸が鳴る。
触れたい、と思った。
その胸に飛び込みたいと。
『明日実?』
一歩踏み出しかけたとき、聞き覚えのある声がしてとっさに足を止める。
「お兄ちゃん。」
『出かけるのか?』
コンビニの袋をぶら下げた兄が私の隣にいる彼に気付くと不審げな表情を向ける。
『初めまして。明日実さんとお付き合いしている青井です。』
『あぁ、そうでしたか。』
怪しんだことを申し訳なさそうに頭を下げる兄に彼もまた頭を下げて、しばらく2人してお辞儀し合う。
親戚のおばちゃん同士のような挨拶に思わず吹き出すと、2人もおかしそうに笑った。
「じゃあ行ってくるね。」
『おう、気をつけて。…あ、青井さん。』
手を振って車へ乗り込もうとすると、なぜか兄が彼だけを呼び止めた。
不思議に思いながらも先に車へ乗り、2人の話が終わるのを待つ。