白い海を辿って。
そのまま眠りに落ちていければ良かったのに、私は一向に眠ることができずにベッドから起き出した。
彼の前だからと思っていたら就寝前の薬を飲むタイミングを逃してしまっていた。
今日はいろんなことがあったし、疲れていたから飲まなくても眠れるという思いもあったのだけど…。
やっぱり無理だった。
そんな落胆と少しの焦りとともにバッグの中から小さなポーチを取り出して、音を立てないように手のひらに薬を落とす。
ミネラルウォーターのペットボトルも取り出してキャップを外していると、パッと部屋が明るくなった。
『明日実?』
少し寝ぼけた様子の彼が不思議そうに私を見ていて、とっさに薬を握りしめて隠す。
「ごめん。起こしちゃったね。」
『ううん、どうした?』
「ちょっと喉がかわいて…。」
私が隠そうとしていることに彼が気付くまでに時間はかからなくて、その表情が強張ったものになっていく。
『明日実、もしかして…。』
もう話していることだから、気付かれたくなかったわけじゃない。
ただ怖かった。
やっぱり面倒だと思われてしまうことが。