白い海を辿って。

『ごめん、俺が寝る前に気付かなくて。』

「そんなこと、」


彼に謝らせてしまうことが申し訳なくて、言葉が出てこない。

どうして普通にできないんだろう。

どうして普通じゃいられないんだろう。



「ごめんなさい…。」


これからも何度もこんな想いをして、何度も彼に謝らせてしまうのかもしれないと思うとつらかった。



『謝らなくていいから。ほら、薬飲んで早く寝よう。』

「うん。」

『大丈夫だから。ゆっくり眠れるように俺が傍にいるから。』


そっと髪をなでてくれる彼の優しさに涙がこぼれる。

面倒だと思ったりしない、いなくなったりしないと言ってくれたことを思い出して、そんな彼の傍で先生のことを思い出していた自分が嫌になる。


薬を水で流し込んでもう1度ベッドに入ると、また彼が抱き寄せてくれた。

そっと包み込んでくれる腕の力に身体を預け、少しずつやってくる睡魔に身をゆだねる。


先程よりも強く感じる愛しさに包まれながら、何もかもを忘れてこの腕の中にいたいと思っていた。



< 166 / 372 >

この作品をシェア

pagetop