白い海を辿って。
『ごめん、俺が寝る前に気付かなくて。』
「そんなこと、」
彼に謝らせてしまうことが申し訳なくて、言葉が出てこない。
どうして普通にできないんだろう。
どうして普通じゃいられないんだろう。
「ごめんなさい…。」
これからも何度もこんな想いをして、何度も彼に謝らせてしまうのかもしれないと思うとつらかった。
『謝らなくていいから。ほら、薬飲んで早く寝よう。』
「うん。」
『大丈夫だから。ゆっくり眠れるように俺が傍にいるから。』
そっと髪をなでてくれる彼の優しさに涙がこぼれる。
面倒だと思ったりしない、いなくなったりしないと言ってくれたことを思い出して、そんな彼の傍で先生のことを思い出していた自分が嫌になる。
薬を水で流し込んでもう1度ベッドに入ると、また彼が抱き寄せてくれた。
そっと包み込んでくれる腕の力に身体を預け、少しずつやってくる睡魔に身をゆだねる。
先程よりも強く感じる愛しさに包まれながら、何もかもを忘れてこの腕の中にいたいと思っていた。