白い海を辿って。
◇第四章◇
あと少しの距離。
【Haruta Side】
腕の中で彼女が眠ったのを確認すると、思わず力が抜けて彼女の髪に顔を埋めた。
いつも使っているのと同じ、俺の髪と同じ香りがする。
彼女が起き出していったことに気付いて目を覚ますまで、俺は本当に何も考えずに寝ていた。
彼女が傍にいてくれる幸せと温もりを感じながら、すっと眠りに落ちていった。
彼女が眠れずにいることに気付けなかったことへの自己嫌悪にさいなまれて、今度は俺が眠れなくなる。
彼女が薬を飲んでいることは聞いていたのに。
どうしてベッドに入る前に薬大丈夫?と聞いてあげられなかったのか。
そう考えて、浮かれていたからだと認める。
気持ちのままに彼女を求めて怖がらせてしまって、部屋から出て行こうとする彼女を必死で引き留めた。
もう怖い想いはさせないと決めたはずなのに。
だけど彼女は、俺を受け入れてくれた。
忘れられない記憶を、俺に上書きさせてくれた。
そのことがたまらなく嬉しくて、幸せだった。