白い海を辿って。

「もしかして気にしてる?…薬のこと。」


彼女は俺の前で薬を飲むことを躊躇っていた。

やっぱり面倒だと思われることを、彼女は1番怖れている。



『ううん、それだけじゃなくて…。』

「話してみ?思ってること何でも。」

『いっぱい謝らせてしまったことが…、』


語尾が震えて、泣いているんじゃないかと不安になったけれど彼女はゆっくりと言葉をつなぐ。



『私のせいでスムーズにいかないことが沢山あるのに、その度にはるくんに謝らせてしまったことが…つらくて…。』


その声が、想いが、心臓の真ん中に刺さって苦しい。



『悪いのも謝らなきゃいけないのも私の方なのに、』

「明日実。」


そっと腕をほどき、正面から向かい合う。

目を見てしっかり、ちゃんと伝えたかった。



「明日実が悪いことなんてひとつもない。俺がもっと気をつけるべきだった。だから自分が悪いとか謝らなきゃいけないとか思うな。明日実はそのままでいいんだよ。」


潤んでいた瞳から涙がこぼれ落ちて、何かから解放されたかのように泣き出す彼女をもう1度ぎゅっと抱きしめた。



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