白い海を辿って。
腕の中にいる小さな彼女を守らなければいけないのは俺なのに、どうしてあんな風に触れてしまったのか。
昨日の出来事を思い出して、また後悔して、さらに大切にしたいと思って。
こんなにも誰かを好きになったことは初めてで、揺さぶられる感情をどうコントロールすればいいのか分からなくなる。
ただ彼女のことが、本当に本当に愛しくてたまらない。
「ご飯食べようか。」
『うん。』
そっと腕をほどくと、涙顔の彼女と目が合う。
今日もずっと一緒にいられる。
ひとつでも多くの笑顔を見たいと、ひとり心の中で思った。
『電話鳴ってるんじゃない?』
「本当だ。誰だろう。」
彼女がそう言ったのは朝食を食べ終えて出かける準備をしているときだった。
スマホの画面を見ると職場からで、慌てて電話に出る。
「えっ?」
驚いた俺の声に彼女が動きを止める気配がする。
教官が1人病欠したため、代わりに俺に出勤してほしいという電話だった。