白い海を辿って。

俺がここに就職したばかりの頃から、理瀬さんには本当にお世話になってきた。

理瀬先生と呼ぶ俺にそんな堅くなくていいよと言ってくれて、本当の弟のように可愛がってくれた。

教官としての理瀬さんも1人の人としての理瀬さんも近くで見てきたからこそ、理瀬さんが本当にいい人であることも知っている。


だけど、彼女と何かあったのではないかと思ったとき、"俺の方が"と思ってしまった。

もし彼女と理瀬さんに何か関係があったとして、だとすれば俺の方がいいんじゃないかって。

離婚して、1度失敗をしてしまった理瀬さんより…って。

そして今こんな気持ちを試すようなことを聞いて。



「最低だな。」


理瀬さんが先に出て行った教官室に、俺の独り言が虚しく響いた。


理瀬さんとは何もないと言った彼女の言葉を俺は信じている。

理瀬さんのことも、信頼している。


彼女と付き合っていることを、理瀬さんに話そうと思った。



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