白い海を辿って。

へぇそうなんだと言われればそれでいい。

本当に2人は何もなくて、あっさり受け入れてもらえるかもしれないし。


だけど、そうはならなかった。



「実は俺、今滝本さんと付き合ってるんです。」


仕事を終えて帰宅しようと駐車場へ向かっていると理瀬さんから『お疲れ様』と声をかけられ、しばらく立ち話をしていた。

その流れで何気なさを装って切り出すと、理瀬さんは想像していたよりもはっきりと動揺した。



『そう、なんだね。』


忘れているとまでは言わないが、彼女の存在は時間とともに理瀬さんの中で小さくなっているのではないかと思っていた。

だけどそれは俺の思い過ごしで、言葉を失くした理瀬さんに俺も何も言えなくなってしまう。



「すいません、関係ない話でしたね。」

『ううん、仲良く幸せにね。』


それ以上理瀬さんは何も言わずに、もう1度『お疲れ様』と言うと先に帰って行った。

ひとり残された夜の駐車場で、理瀬さんの表情を思い返す。


彼女と何かあったと、思わずにはいられなかった。



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