白い海を辿って。
すれ違う心。
【Asumi side】
バス停で彼と別れてからまっすぐ家に帰る気になれなくて、しばらくあてもなく歩いた。
昨日、私は間違いなく一歩踏み出したんだと思う。
止まっていた時間が、動き出したんだと思う。
彼なら大丈夫だと、彼なら信じられると、心から思うことができた。
なのに、嬉しいよりも戸惑いを感じてしまうのはなぜだろう。
何の疑いもなくまっすぐに明るい未来を話す彼に感じてしまった小さな不安は何だったんだろう。
面倒だと思われたくないと思う気持ちが強くなりすぎて、彼に沢山謝らせてしまった昨日。
朝、普通に起きてきてくれた彼にほっとして力が緩んだ。
信じられると思った人を本当は全然信じられていない自分が嫌になって、また不安になって。
付き合う前よりも付き合い始めてからの方が怖くて、自信がなくて。
どうすれば自然に一緒にいられるのか、誰かとともに何気ない時間を過ごすことがこんなにも難しいことだったなんて。
会いたい、と思った。
だけどそれが誰になのかは、自分でも分からなかった。