白い海を辿って。
歩き疲れてきた頃、バッグの中から聴こえる着信音に気付いて立ち止まる。
画面を見ると兄からで、ふっと心が和らぐ。
「もしもし。」
『明日実?今どこだ?』
「今?」
バス停から結構な距離を歩いてきたのか、辺りを見回してもここがどこだか分からなかった。
『青井さんから連絡もらったんだよ。急に仕事になって明日実をバス停まで送ってったから迎えに行ってくれって。』
「え?」
『だから今来たんだけど明日実いないしさ。どこいんだよ。』
いろんな想いが頭のなかをめぐっていて、すぐに答えることができない。
彼がお兄ちゃんに連絡?
「なんで、連絡先…」
『昨日交換したんだよ。何かあったときのためにって。まさか早速連絡くるとは思ってなかったけど。』
「そうなんだ。」
昨日、彼が初めて私の家族に会った。
そういえばそのとき、2人で話していた。
まさかあの短い時間で連絡先まで交換していたとは思わなくて、少し驚いた。