白い海を辿って。

静かな車内で、どうしてひとりになれたことに安心したのか考えていた。


それは、傷つける心配がないからだ。


私を受け入れてくれた人をこれ以上傷つけないで済む。

謝らせないで済む。

一緒にいる間、私を傷つけないように彼が細心の注意を払ってくれていると感じていた。

その気遣いが、日に日に大きくなっていくようで。

申し訳なくて、苦しくて。


彼なら大丈夫だとすべてを打ち明けて、やっぱりそんなの重かったんじゃないだろうか。



『大丈夫だとは思うけど、』


ふいに呟いた兄の声に我に返る。



『もし何か困ったことがあったらいつでも言えよ。』

「うん。ありがとう。」


散々迷惑をかけて、心配させてしまったあの頃。

もうあんな想いは、家族にも絶対させたくない。


だから壊したくなかった。

慎重に慎重に、この恋を、彼を大切にしていきたい。


バッグの中でスマホが響いていたことに、このときはまだ気付いていなかった。



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