白い海を辿って。
『今日、理瀬さんに話したんだ。俺が明日実と付き合ってること。』
「…え?」
『普通にそうなんだって言ってくれると思った。何もなかったっていう明日実の言葉も信じてた。でも…』
何もなかった。
私たちは本当に、何もなかった。
『理瀬さんは動揺してた。ショックを受けてるって、はっきり分かった。』
「そんなこと」
『分かったんだよ。』
否定しようとした私の言葉を一言で封じ込めるくらい強くなった口調に何も言い返せなくなる。
動揺していたと聞いた私もまた、そのことに動揺していた。
先生にとって、私は今どんな存在になっているのだろう。
まだ、過去の出来事にはなっていないのだろうか。
『理瀬さんの表情見てたら急に何もかもが信じられなくなって、そんな自分に腹が立った。明日実のことを信じたい。会いたい。そう思って家に行った。』
そこで、先生からの着信を見てしまった。
何かあると思うのも、私が信じられなくなるのも当然のことだと思う。