白い海を辿って。

「偶然先生に再会してから2人で話したり出かけたりするようになって、先生が離婚を考えてることを知ったの。」

『うん。』

「そのときには私はもう先生のことが好きで…。先生がどれくらい私を想ってくれてたのかは分からないけど、まだ離婚してないなら2人で会うのは良くないと思った。」


人生の大きな岐路になるはずの出来事を、どこか他人事のように俯瞰で見ていた先生。

奥さんのことも、何も知らないみたいに思えた。



「奥さんとのこと、離婚のこと、ちゃんとしてからまた会いにくるって先生は言ってくれた。…だからずっと待ってた。」


連絡が来なかった日々は、先生への想いを強くしていった。


だけど、再び会いにきてくれた先生があんなにも弱っているなんて、その頃はまだ想像もしていなくて。



「先生はね、いっぱい後悔してた。離婚したすぐ後に私とのこと考えるなんて、そんなのできなくて当たり前だったと思う。」

『じゃあ、それっきり…?』

「会ってない。だからなんで今日電話がかかってきたのかは、私にも本当に分からないの。」


そう言いながら、手の中にあるスマホが再び震えることを、私はどこかで期待していた。



< 192 / 372 >

この作品をシェア

pagetop