白い海を辿って。

本当は、1度だけ連絡がきた。

彼と付き合うと決めた日、元気にしていますかというたった一言だった。

あの一言からも先生の気持ちは分からなくて、いつしか私は先生からの連絡を待たなくなった。


もう待っていなかったはずなのに。



『俺が話したからじゃないかな。明日実と付き合ってること。』

「それで連絡してくるかな…。」

『理瀬さんからの着信を見たとき、引き戻そうとしてるように思えた。』

「引き戻す…?」

『明日実を。自分のところに。』


いろんな違和感が頭をかけめぐった。

だけどそれをうまく言葉にすることができない。



『迎えに行くまでずっと好きでいてくれると思っていた明日実が、知らない間に同僚と付き合ってたなんて面白くないだろ。』

「………。」

『理瀬さんは明日実に甘えてたんじゃないのか。ずっと連絡しなかったくせに状況変わったら急に思い出したみたいに電話してさ。』

「先生はそんな人じゃない。」


ようやく口に出せた一言は弱々しく震えて、何の説得力もなかった。



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