白い海を辿って。
渡される想い。
【Haruta Side】
「理瀬さんが?」
早見先生からその話を聞いたのは、12月も半ばに入った寒い日だった。
『あぁ。しばらく応援でな。』
「何も理瀬さんが行かなくても…」
『本人の希望もあったから。』
この教習所は2ヵ所あり、そのもう1校へと理瀬さんが応援へ行くことになった。
入所者が多く手が回らない状態だという。
冬休みで入所希望者が増える時期、生徒からの信頼も厚く安定感のある理瀬さんが抜けるのはうちにとっては痛いはずだ。
「希望、ですか。」
『あぁ。1度違う環境でやってみたいらしい。』
本人からそう言われれば、止めることはできないだろう。
もし…
もし、理瀬さんがそのまま帰ってこないつもりだったら。
違う環境でやってみたいと思った理由に、そして実際にここを離れようとしていることに、自分が関わっているような気がして鼓動が速まる。
俺が彼女と付き合っていることを話して以来、理瀬さんとはまともに会話をしていない。