白い海を辿って。

教官室へ戻ると、理瀬さんがロビーの自動販売機でコーヒーを買ってきてくれた。

外から微かに他の教官やスタッフたちの気配が聞こえてくるくらいで、2人とも黙ったままの小さな部屋はとても静かだ。



『俺は、滝本さんを傷つけた。』

「え?」


何の前置きもなく断言された一言に、少しの違和感を覚えた。

彼女から聞いた話では、彼女が傷けられたような印象は受けなかったから。



『青井くんが俺と滝本さんに何かあったんじゃないか気にしてるって、早見先生から聞いたんだ。』

「すみません…勝手なこと聞いて。」

『いや、いいんだ。一度ゆっくり話した方がいいと俺も思ってたから。』


あのときの表情を思い出すと自己嫌悪に陥るけれど、早見先生も気にしてくれていたと知って少し救われた。



『滝本さんとは、本当に何度か数える程度だったけど2人で会った。それだけだったけど、好きだって気持ちがすごく大きくなってしまって。』


知っている。

彼女と付き合っていると報告したときの表情を見れば、本当に好きだったんだと簡単に分かったから。



< 200 / 372 >

この作品をシェア

pagetop