白い海を辿って。

『結婚から離婚するまでの経緯は本当に俺が酷くて、全部俺の責任なんだ。』


いつか俺が聞いたときにも、理瀬さんはそう言っていたことを思い出す。

離婚したのは、責任感がなかったから。



『一生生活を共にするって決意も、人生を背負う覚悟も、持ってたつもりで何も持ってなかった。たったひとり大切にしなきゃいけない人を幸せにできなかったことに、思ってたよりもずっと強く打ちのめされた。』


一生生活を共にするとか、誰かの人生を背負うとか、独身の俺には想像もできない領域だった。

結婚、ましてや離婚なんて。

彼女を迎えに行けなかったのも、考えられなくなったのも、そんなに打ちのめされた状態では確かにできなくて当然のように思えた。



『流されて流されてなんとなく生きてきた自分が悪いからこそ、もう同じことを繰り返したくなかった。…同じように、滝本さんを傷つけたくなかった。』


語尾が少し掠れたその声に彼女への未練を見てしまった気がして、苦しかった。



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