白い海を辿って。

先に帰って行った理瀬さんを見送って車に乗ろうとしていると、後ろから肩をたたかれた。



「早見先生。」


早見先生は何も言わず、ぽんぽんと更に2回優しく肩をたたいて帰って行った。


頑張れよ。頼んだよ。

いろんな想いが込められているようなその手の優しさに泣きそうになる。


もう今日は遅いから電話の代わりにおやすみとLINEを送ると、すぐにおやすみなさいの一言が返ってきた。


本当はすぐにでも会いたかった。

会って、もう1度謝りたかった。

理瀬さんとのことを疑って、勝手なことをして。


理瀬さんが今も彼女を想っているであろうことを、俺は絶対に彼女に言わない。

そして俺は、理瀬さんが持つことのできなかった、一生生活を共にする決意や誰かの人生を背負う覚悟を持ちたいと思った。


その言葉破ったら許さないよと言った理瀬さんに、心の中でもう1度返事をする。


破らないんで安心してください、と。



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