白い海を辿って。
付き合っていた頃から結婚したての頃まで、俺は心から妻を好きだった。
プロポーズをしたのも俺からだったし、新婚生活も幸せだった。
そう思い返す一方で、本当は妻のことがちゃんと見えていなかったような気もする。
俺が幸せだと、思い込んでいただけ。
一緒にいる時間が長くなればなるほど、妻がどんなことで笑いどんなことで悲しむのかが見えなくなった。
ひとりになった今では、笑顔ひとつ思い出すことができない。
お互い仕事の忙しさを理由に旅行も新婚旅行以降はしていなかったし、休日に出かけることもどんどん減っていった。
子供が欲しいなんて話は、出ることすらなかった。
一体俺たちは、この4年どんな話をしてきたのだろう。
出会った頃は無数にあると思えた話題も知りたいことも、どんどんなくなっていった。
気づけば家ではいつもテレビがついていて、俺の妻情報は新婚当時から何ひとつ更新されていない。
好きという気持ちも、更新されなかったのだろうか。