白い海を辿って。

『おー うまそうだな。』


部屋着に着替えて出てきた彼はもういつもの彼で、声が暗かっただなんて私の気のせいだったような気がしてくる。



『材料買いに行ってくれたんだな。』

「うん、いろいろ作りたかったし。」

『お金払うよ。レシートある?』

「いいよいいよ!いつも出してもらってるんだし、これくらいさせて。」


彼は少し考えるような表情をしたけれど、ありがとうと頷いて頭をぽんと撫でてくれた。



『今日も泊まってく?』

「うん、明日の朝帰ろうかな。」

『じゃあ朝送ってくな。この際着替えとかも何着か置いといていいぞ。』

「ありがとう。」


ご飯を食べていた手を、彼がふいに止める。

そのことに気付いて私も手を止めると、ていうかさ…と彼が呟く。



『ずっと、いていいんだぞ。』

「え…?」


ずっと、いてもいい?ここに?

それって、



『ここで一緒に暮らさないか?』


まっすぐに目を見て言われた言葉を、すぐに受け止めることができなかった。



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