白い海を辿って。
さっき少し様子がおかしく見えたのは、これを言おうとしてたからなのかな。
ここで一緒に暮らす。
つまり、同棲。
付き合い始めてから3ヶ月近くが経っている。
その時期が同棲を始めるのに早いのか遅いのかは、私には分からない。
だからきっと、答えは私の気持ち次第なんだろう。
『今すぐ決めなくていいから、ちょっと考えといて。』
「うん。」
なかなか返事ができないでいる私に優しくそう言うと、彼はまた笑顔でご飯を食べ始めた。
楽しいと思う、彼と一緒に暮らせれば。
でもなぜか、すぐに頷くことができなかった。
『気をつけて帰れよ。』
「ありがとう。」
翌朝、家の近くまで送ってもらい車から降りるまで私は答えを返せないままだった。
「あ、これ…」
『あぁ、いいよ。持ってて。』
合鍵を返そうとした手をそっと押し戻される。
行き場をなくした手をそっと握り、固くて冷たい感触をただ感じていた。