白い海を辿って。

『で、まだ返事してないままなんだ。』

「はい…。」


彼から一緒に暮らそうと言われてから1週間が経っていた。

職場の先輩であり店長である倫子さんが、パソコンを触りながら話を振ってくる。



『いい人だと思ったけどね。』


昨日、倫子さんと彼と3人で食事をした。

彼と付き合い始めたことを報告したときから倫子さんは彼に会いたがっていて、昨日ようやく会ってもらうことができた。

明るくてサバサバとした倫子さんは彼を散々質問攻めにしたり『私の方が明日実ちゃんとの付き合いが長い』と変なアピールをしたりしていたけれど、終始なごやかで楽しい夜だった。



『ちょっとだけ心配でもあるよ。』

「え?」

『青井さんががどうってことじゃなくて、明日実ちゃんが。』

「私、ですか?」


手を止めて身体をこちらに向けた倫子さんに向き合うと、言葉の通り心配そうな表情をしていた。


倫子さんは全て知ってくれている。

私の、これまでのこと。



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