白い海を辿って。
『なんであんなに気遣ってるの?自分の彼氏に。』
「気、遣ってましたかね。」
『気を遣うっていうか、顔色うかがってるよね。ずっと。』
そんなことないと言うことができなかった。
思いきり、図星だったから。
『今まで彼氏の話してたときはもっと純粋に好きって気持ちが伝わってきてたのに、何かあったのかなって。』
「それは…」
『同棲の話だけじゃないんじゃない?』
この人には、何も隠せないと思った。
もっと早くに相談していればよかったとも。
彼が理瀬先生の連絡先を消去した話を倫子さんには話していない。
そもそも、私は先生のことを何も話していなかった。
先生が打ち明けてくれた想いを、言葉を、私だけで大切に持っておきたくて。
だけど連絡先が消えたときに、私の中で先生とのことは本当に終わったのだと思う。
だから今なら、終わったこととして倫子さんにも話せそうな気がした。
先生の想いと言葉はそのままにして、ただ起きたことを簡潔に、過去のこととして。