白い海を辿って。

「彼はあの人とは違うって分かってます。あの人とのことも知ってくれているし、そんなことしないって信じてます。でも…何がきっかけでそうなるかは分からないから…。」

『そうだよね。』


何もなかったようにしていれば、いつか本当に何もなかったことになるような気がして。

このままで、ただ、このままでいたくて。



『でも、されたことは消えないよ。明日実ちゃんが今でもまだ昔のことを思い出してしまうみたいに。ずっと、どこかに引っかかったままになるよ。』

「私が、もう気にしなければいいだけなので。」

『気にしてるじゃない。実際、彼氏の顔色うかがってそれ以上のことをされないか怯えてる。』


倫子さんの言うことは正しくてまっとうで、まっすぐ私にぶつかる。

私の考えが甘いことを、優しく、だけどしっかりと突き付けてくれる。



『ずっと一緒にいたいって思う人は、もっと何も考えずにただ一緒にいられる人だよ。』


胸の中にその言葉がストンと落ちたとき、ひとつ視界が開けたような気がした。

私が一緒にいたい人…。



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