白い海を辿って。

ずっと一緒にいたいと思う人は、何も考えずにただ一緒にいられる人。

何も考えずに一緒にいられるようになるまでには、どれくらいの時間がかかるのだろう。

分からないけれど、私はまだそれだけの時間を彼とは過ごしていないような気がした。



「倫子さん。」

『うん。』

「私、もう1度彼と向き合いたいです。」


確かに、されたことは消えない。

ひどいことをされたのかもしれない。

でも、



「彼は私を前に進ませてくれた人なんです。ここで向き合うことから逃げたら、私はこの先も同じことを繰り返してしまうと思います。」


誰かを好きになって、だけど些細なことで怖がってすぐにその手を離してしまう。

自分でそう言って、はっとした。

同じことを繰り返してしまう怖さ。

先生が私と会わなくなった理由。



『いいのね?』

「はい。私、もう彼のことを怖がったりしません。」


私が彼と付き合い始めたのは、先生と会わなくなって寂しかったからなんかじゃない。

彼のことを、好きになったからだ。



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