白い海を辿って。
近くて遠い。
【Asumi side】
理瀬先生に会ってから1週間が経っていた。
あれから、どんなときも何をしていても頭のどこかに先生がいる。
先生も同じように、私のことを思い出してくれたりしてるのかな。
それとも私に会ったことさえも、もう忘れてしまってるかな。
もう1度会いたい。
あの優しい声が聞きたい。
そう思うけれど会える手段はなくて、少し話したくらいでいっぱいいっぱいになったりせずに思い切ってもっと話しておけば良かったと思う。
そんなことを考えながら、私は今日もあの映画館に向かっている。
先生に会ったあの映画館に、先生に会ったのと同じ時間に、先生に会えることを期待して。
だけど…、
「いるわけないよね。」
2週続けて同じ場所で会えるかもしれないなんて、とても安易な発想だ。
「いるわけ、ないよね。」
諦めるためにもう1度つぶやいてから、私は映画館を後にした。