白い海を辿って。

『腹へったわ。』


顔を放すと、私の髪をくしゃくしゃと撫でてから笑う。

部屋へと入っていく彼の背中を追いかけて、急いで夕食を温める。

何から話そうか、うまく伝えられるか、そんな不安を必死で打ち消しながら。



『今日もうまそうだな~。』


部屋着に着替えた彼が嬉しそうな表情でテーブルを眺めながら、食器やお箸などを運んでくれる。


もうすぐやってくるクリスマスや年末年始のことについて他愛もない話をしながらご飯を食べていると、毎日こんなだったら幸せだよなと言った彼の言葉が頭をよぎった。


毎日こんなだったら。

ご飯を作って彼の帰りを待ち、一緒にご飯を食べて何気ない会話をする。

一緒に眠って一緒に朝ご飯を食べる。



「毎日こんなだったら幸せだね。」


無意識に漏れた言葉に、だろ?と笑った彼の笑顔が好きだと思った。



「あのね、はるくん。」


食後にソファーでくつろいでいる彼に声をかけると、声のトーンが違うことに気付いたのかテレビを消した。



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