白い海を辿って。

「お願いがあるの。」

『どうした?』


はっきりと心配を表情で示す彼に、ひとつ呼吸を置いて話す。



「先生…理瀬先生に、会いに行ってもいい?」

『え…?』

「先生と話したいの。話して、ちゃんと、終わりにしてくる。」

『明日実…。』


揺らいでいた彼の瞳が、まっすぐに私を捉えた。

だから私も見つめ返す。

もう揺らいだりしないように。



「私ね、最後に先生に会ったとき、会いたくなったら連絡してもいいですかって言ったの。」

『会いたくなったら…』

「うん。でも結局1度も連絡はしなかった。次に連絡するとしたら、離婚して自信をなくしちゃった先生がもう大丈夫って思えるくらい時間が経ってからだと思ってたから。」


自信がないのは私も同じだった。

何も話せず、最後まで本当の自分を見せられなかった。

だけどそれは、長い月日があれば取り戻せるものだと思っていた。



「でも、はるくんに会った。」


私が待とうとしていた長い月日は、彼との再会によって途切れた。



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