白い海を辿って。

「私が会いたいって言っても、きっと先生は会ってはくれなかったと思う。心のどこかでそう分かってたから私は連絡しなかったし、忘れようと思った。」


先生の声や表情は簡単に思い出せるけれど、今の先生は想像することもできない。

いつか先生が元気ですかとたった一言聞いてくれたように、私から聞くことだっていくらでもできたはずなのに。


向き合うことから、ずっと逃げ続けてきた。

その結果、彼を不安にさせて、先生のことも何も分からなくなった。

私だけが、気持ちをはっきりさせずに甘え続けている。



「はるくんに会って、私は勝手に先生とのことを終わらせたつもりでいた。もう会わないんだろうなって、勝手に思ってた。」

『明日実。俺は、』

「でももし先生の中で、私が最後に言った言葉がまだ生きてるなら、私は先生を裏切って…ずっとひとりぼっちのままにさせて…」


何か言おうとした彼を遮ってまで続けようとした言葉は、最後まで言えなかった。

最後に会ってから更新されていないままの先生の顔が、切なくて、苦しくて。



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