白い海を辿って。
『明日実の気持ちが戻ってしまうことが怖かった。理瀬さんの話をすれば、好きだった気持ちを思い出すんじゃないかって。』
「そんなこと、」
『でも今、ないって分かったよ。』
先生が何を言ってくれたのかも、2人がどんな話をしたのかも、私には想像すらできないけれど。
それを聞いても気持ちが戻らないことを、彼が分かってくれたことが嬉しかった。
「先生、なんて…?」
『聞いてくればいいよ。自分で、直接。』
「じゃあ…いいの?」
『あぁ。終わらせてくるっていう明日実の言葉を、今なら信じられる。』
無意識のうちに、隣にいる彼の胸に寄りかかっていた。
私が帰ってこられる場所が、今ここにある。
『悪かった。俺が連絡先消すようなことしたから、怖い思いさせたよな。これからまた新しい気持ちで一緒に過ごすためにも、会ってきてほしい。』
うん、と頷くだけで精一杯だった。
ぎゅっと抱きしめられる腕の温もりを、これからもずっと感じていたいと思った。