白い海を辿って。
◆第五章◆
ひとりの日々。
【Shuto Side】
街中がキラキラと輝くクリスマスシーズンにも、何の心の揺らぎもなく日々を送っていた。
離婚してから、2つの季節が過ぎた。
ひとりの生活にはもうすっかり慣れて、ひとりでいることが当たり前になったからか寂しいなんて感情も抱かなくなっている。
もうすぐひとりでの年越しだ。
クリスマスなんてもはや関係ない。
実家に帰ろうか、帰ったところで気を遣わせるだけだよななんて思いながら、車のロックを解除する。
『理瀬先生、お疲れ様でした。』
「あ、お疲れ様。」
今日も無事に仕事を終え、程よい疲労感に包まれる。
冬休みに免許を取りに来る学生は多い。
教習生が増えて増えて手が回らないというこの教習所から応援の要請が来ていると聞いたとき、反射的に手を挙げていた。
何よりも安定と平穏を望む俺があの街を離れたいと思っていることに自分でも驚いた。
でも確かに離れたかった。
あの子と後輩がいる、あの街から。