白い海を辿って。

洋服や雑貨などのショップには目もくれず、映画館を出てまっすぐに駐車場に向かった。


バカみたいだな、と思いながら。

先生と会えるかもしれないからといつもより丁寧にメイクをしたり、少し大人っぽいワンピースを着たり、髪も綺麗に巻いたりして。

普通に考えて無意味だ…と冷静に思いながら車の鍵を開ける。



『滝本さん?』


そのとき、後ろから私を呼ぶ声がした。



「嘘、でしょ…。」


そこにいたのは、紛れもなく先生だった。

会いたくて仕方がなかった先生が、そこにいた。



『良かった、車乗る前に気付いてくれて。』

「どうしたんですか?」


切羽詰まったような声で私の名前を呼んだ先生がほっとしたような顔で近付いてきて、私の鼓動が速くなる。


大丈夫、ちゃんとしてる。

バカみたいに変な期待をして来たから、ちゃんと先生と向き合える。


自分で自分が嫌になったりせずに、今日こそ、ちゃんと。



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