白い海を辿って。
『クリスマスに1人でいたくないと思うことがバカなことなの?』
「1回くらいいいとか言うことだよ。」
『バカはそっちじゃん…』
もう言葉遣いもめちゃくちゃになっている椎野さんは、身を投げ出すようにソファーに座る。
帰る気はないようだと諦めて、俺も固い椅子に座った。
『女を惨めな気持ちにさせる方がバカだよ。』
「終わってから惨めな気持ちになるのは椎野さんだから。」
『バカみたいに正しいこと言うのね。』
椎野さんにはきっとこんな夜が何度もあって、でもうまくいかなかった夜は1度もなかったのだろう。
どれだけつまらないと思われても、バカみたいに正しいことを言うしかない。
俺だって惨めな気持ちにはなりたくないのだから。
『そんなだから離婚するんだよ。』
「はいはい。」
『何?さっきの、幸せにしてあげられないって。そんな上から目線でいるからダメなんだよ。一緒にいて幸せになれる人に出会えばいいだけなのに。』
初めて、椎野さんの言葉が胸に突き刺さっていた。
一緒にいて幸せになれる人。