白い海を辿って。
『1回失敗してるんだからさ、幸せにしてくださいくらい謙虚でいた方がいいよ。』
「ははは。」
『何が面白いの。ほんとバカ。』
笑うしかなかった。
本当にバカだ、俺は。
幸せにしてあげられないじゃなくて、幸せになれば良かったのか。
2人で。一緒に。
「もう遅いよ。」
『遅くないでしょ。』
「向こうはもう俺じゃない男と幸せになってる。」
『はぁ…根っからのバカ。筋金入りのバカ。』
そんなこと言ったって、ひとりになった俺にはそんな簡単なことに気付ける余裕もなかった。
ボロボロのまま迎えに行って、幸せにしてくださいって言っても良かったのか…?
『こっち来れば?』
「行かない。」
『おいでって。』
1度ソファーから立ち上がり、俺の手を引っ張ってそのままソファーに倒れ込む。
『安心して、襲わないから。』
「ははは。」
『朝まで一緒にいるだけ。』
ぐっと俺を抱きしめる椎野さんにただ身体を預けているうちに、静かな夜は更けていった。