白い海を辿って。

クリスマスは1人じゃなかったけれど、年越しは1人だった。

朝まで飲みましょうよと声をかけてきた椎野さんを今度は丁重に断って、1人で過ごすことを選んだ。


掃除をしたり日用品の買い物をしたりしていると、年末年始休みなんてあっという間に過ぎていった。


今日、滝本さんに会いに行く。


一緒にいて幸せになれる人に出会えばいい、そう椎野さんに言われてから、蓋なんて無意味なくらい滝本さんのことを思い出してしまう。

だけど今日は、絶対にその気持ちに蓋をしなければいけない。

少しでも漏れてしまわないように、ぐっと、強く。


滝本さんから送られてきた場所へ向かうと、昔ながらの喫茶店に辿り着いた。

カフェというよりも喫茶店と呼ぶのが似合う、懐かしい雰囲気の店だ。


初めて行く店を探しているうちに待ち合わせの時間を少し過ぎてしまった。

きっと、滝本さんはもう中にいるはずだ。


1度深く深呼吸をして、そっとドアを押した。



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