白い海を辿って。
近隣住民の憩いの場になっているのか、年明けにしてはテーブルが埋まっている。
程よく会話が響く空間が、心地良いと思った。
『先生。』
その会話の狭間から、懐かしい声が届く。
顔が険しくなってしまわないように気をつけながら声のした方を見ると、そこに滝本さんがいた。
何も変わっていない、苦しいくらいにあの頃のままの滝本さんが。
「ごめん。遅くなった。」
『いえ、場所分かりづらかったですよね。』
「ううん、大丈夫だよ。」
店員にコーヒーを注文すると、滝本さんが私は紅茶をと言う。
余裕がなさすぎて、注文を待っていてくれたことに気付かなかった。
「久しぶり。」
『お久しぶりです。』
「寒いね。」
『はい。』
だけど向かい側から緊張しているのは俺だけじゃないと伝わってきて、なぜか少しだけ安心する。
もう全て過去のことのように余裕でいられたらどうしようと、少し不安だったから。