白い海を辿って。

「青井くんから滝本さんとのことを聞いたとき、うまくリアクションできなくて。もしかしたら青井くんが何か誤解したんじゃないかって心配だったから、大丈夫だったか確認したかったんだ。」

『それは…大丈夫でした。』


表情が暗いのは、気を遣っているからなのか、本当は大丈夫じゃない何かがあったからなのか。



「良かったね。」

『はい。』

「幸せでいてくれて安心した。」

『ごめんなさい。』


そうつぶやいて俯いた彼女の手の中で、紅茶が冷めていくのが見えた気がした。

ぬるくなって、冷たくなって、砂糖が下に溜まって。



「俺はひとりで元気にやってるから。」

『そうじゃなくて…。』

「滝本さんが気にすることは何もないよ。」

『あのとき一緒にいられなくて、ごめんなさい。』


離婚したばかりの頃、何とか俺の傍にいようとしてくれた滝本さんを悲しみを理由に遠ざけたのは俺だ。

同じことを繰り返してしまいそうで怖くて、幸せにしてあげられないことが、申し訳なくて。



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