白い海を辿って。
彼の隣。
【Asumi side】
彼は喫茶店から少し歩いた先の公園で待っていてくれた。
『おかえり。』
「ただいま。」
助手席に乗り込んだ私に優しく声をかけて、1度ぎゅっと手を握ってくれる。
「お別れしてきた。」
『うん。』
数ヶ月振りに会った先生は、やっぱり先生だった。
まだ自信を取り戻せていないままだと分かる声のトーンも、表情も。
あの頃私が好きになったどこか放っておけないような先生が、今日も変わらずそこにいた。
そんな先生を目の前にした動揺は覚悟していたよりも大きくて、話さなきゃいけないことも切り出さなきゃいけないさよならも、結局全部先生から言ってくれた。
そういうところがとても大人で、私はまだまだ子供だ。
好きになってくれてありがとう。
好きになれて良かった。
そして最後も先生はありがとうと言った。
終わらせに来てくれてありがとう、と。
優しすぎるくらいの優しさが、とても苦しかった。