白い海を辿って。

『お別れしてきたんだろ。』

「してきたよ。でもね、」

『でも?』

「私はすごく酷いことをしたんだって、初めて気付いたの。」


会いたくなったら連絡してもいいですかと言ったまま、私は彼と付き合い始めた。

私が連絡しても先生は会ってくれなかったと思うなんて、私の勝手な言い訳だ。


全部、綺麗事だ。


先生を好きだった気持ちをどこかへ置いてきて、彼を好きになった。

ずっと黙って付き合ってきた。



「私…最低…。」


溢れる涙を拭うこともできないくらい、心がえぐられて痛い。

全部自分でつけた傷。

今日私が先生に話したことは全て、彼と付き合い始めるときに話さなきゃいけないことだった。


私は向き合うことからずっと逃げてきたんだ。

会わなかった期間の分だけ、深く先生を傷つけた。



『明日実は悪くないよ。』

「先生は、ずっとひとりだった…。」

『でもそれは明日実のせいじゃないだろ?』


私のせいじゃないと言えるのだろうか。

私は確かに、先生のことが好きだったのに。



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