白い海を辿って。
「私があのとき一緒にいれば、」
『明日実!』
強くなった彼の声にはっとする。
今更こんなことを彼に言ったって、彼のことも傷つけてしまうだけなのに。
『それ以上言うな。今それを考え出したら、明日実は戻るだろ…理瀬さんのところに。』
「戻らないよ。でもはるくんだって嫌でしょう?こんな私。こんな…自分勝手に人を振り回すような…」
『明日実。』
今度は先程とは違う、静かで落ち着いた声だった。
私は先生のところに戻ったりしない。
もう、合わせられる顔がない。
『少し歩くか。』
彼は通りかかった公園の駐車場に車を停めると、私の返事を待たずに降りる。
慌てて追いかけると、追いつくよりも少し先に彼が私の手を握った。
『俺は明日実を嫌になったりしないし、自分勝手に人を振り回してるなんてことも思わない。』
寒い風が吹く公園に人気はほとんどなくて、たまに楽しそうにはしゃぐ子供の声が聞こえてくる。