白い海を辿って。
『可愛いね。』
突然そうつぶやいた先生の声にドキドキする。
車のことだと分かっているのに、緊張が止まらない。
「…乗りますか?」
『え?』
唐突に、そんな言葉が出た。
心の中の小さな希望が声になって出てきたことに自分で驚く。
『え、いいの?乗りたい。』
焦って取り消そうとした私よりも先に先生が言う。
私の小さな希望を、これっぽっちの勇気を、優しくすくい上げるように受け止めてくれる先生の声が心に沁みていく。
『乗せてくれる?』
「はい、ぜひ。」
こんなチャンスを逃したくない。
先生と過ごせる時間を、先生の隣にいられる空間を、逃してはいけない。
必死なくらい、そう思っていた。
いっぱいいっぱいになってもいい。
いっそ普通じゃないと気付かれてしまってもいい。
ただ先生の隣にいられれば、それだけで。