白い海を辿って。
「どこに行きますか?」
『そうだなぁ、じゃあとりあえずこの辺を少し走る感じで行こうか。』
先生が隣にいる。
それは教習所に通っていた頃にもあったことだけど、こんなにも緊張してしまうのは当時よりも先生を意識しているからだろうか。
「なんか、教習を思い出します。」
『本当だね。あ、そこ右ね。』
「ははっ。」
先生らしく指示を出されたことに自然と笑みがこぼれて、少しずつ緊張がほぐれていく。
『滝本さんは、確か学生じゃなかったよね?社会人さん?』
「あ、はい…一応。」
いつかは聞かれると思っていたことだけど、やっぱりこの手の会話は居心地が悪くなってしまう。
社会人なんて立派なもんじゃないし。
『どんな仕事してるの?』
「ファッション関係です。」
『あぁ、俺の苦手分野だわ。』
そう言って笑う先生の声は教官としてのものよりもとても自然で、その温度が今車内に2人きりなのだと実感させる。