白い海を辿って。

『ファッション関係って、ショップ店員とか?』

「うーん、ちょっと違います。ネットショップなんです、洋服と雑貨を売ってる。」

『へぇ、すごいね。』


先生はすごく感心したように言ってくれたけれど、私は大したことしてないのに…と心に少しトゲが刺さる。



『水曜日は休み?』

「いえ、休みは火曜日と日曜日なんで、今日は帰りなんです。」

『ごめん、じゃあ疲れてたかな?』

「いえ、全然。」


本当は少し疲れていたけれど、先生に会えたからそんなものは吹っ飛んだ。

さらりと気遣ってくれる先生の優しさが嬉しい。



『でもあまり連れ回すと悪いから、近場を走ろうか。』


喜んでいたのも束の間、窓の外を見ながら何でもないように言った先生に少し距離を感じてしまう。


もっと先生のことを知りたいし、近くに行きたい。

先生の話を聞きたい。


どうして左手の薬指から指輪が消えたのか、知りたい。


先生は、結婚しているんですよね?



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