白い海を辿って。
『全部何もなかったみたいに話せるようになるまで、私は病院に通わなきゃいけない。』
「分かってる。」
『はるくんが一緒だと、そのままでいいんじゃないかって思っちゃうの。何も乗り越えてないままでも、はるくんは全部受け止めてくれるから。』
彼女の言う通りだった。
俺は彼女のどんな姿も、過去のことも含めて全てを受け入れたいし、受け止めたい。
「それじゃダメなのか?」
『うん。私は乗り越えたいから。忘れるよりも、なんてことないみたいに話せるようになりたい。でもそのときはるくんが傍にいてくれたら、私は甘えるだけで何も変われない。』
「明日実…。」
忘れてほしいと思っていた。
彼女を傷つけた元彼のことなんて。
だけど彼女は乗り越えようとしていた。
苦しんでる姿を見せないように、俺の知らないところでずっと。
『だから病院のことは、どれだけかかるか分からないけど…いつか大丈夫になる日までひとりで頑張らせてほしい。』
守りたいと思った。
ひとりで頑張りたいなんて言う彼女の傍に、ずっといたいと思った。