白い海を辿って。

『何もないしいつのか分からない食パン入れとくのやめてください。』

「あぁ、忘れてた。」


冷蔵庫に入れておけばなんとなく日持ちするような気がして、そのままになっていた。

基本冷蔵庫には何も入っていなくて、いつもはだいたい弁当か外食だ。



「すいません。」

『捨てるときに謝るくらいならちゃんと完食してください。』

「すいません。」


ひとりだったら食べてただろうなと思いながら食パンをゴミ箱に捨てる。

そうなるといよいよ食べるものがない。



『なんか頼みましょう。』

「ラーメンならあるけど。」

『いりません。』


ソファーにどさっと座り、スマホでデリバリーの情報を調べる椎野さんに後は任せることにする。

お茶でも淹れようと冷蔵庫を見るとペットボトルが1本しかない。



『お酒ないんですか?』

「ないよ。椎野さんは受付だからいいかもしれないけど、俺は明日も乗るんだから。」

『真面目ですね。』

「当たり前だから。」


仕事の前日は酒は飲まない。

どんなに飲んで酔い潰れたいと思った日も、絶対に飲まなかった。



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