白い海を辿って。
だけど最後に滝本さんに会った日は、正月休みだったこともあって思い切り飲んでしまった。
あれ以来、自宅の冷蔵庫に酒が入っていることはない。
『中華でいいですか?』
「あぁ。」
『支払いはお願いします。』
「はいはい。」
独身男の独り暮らしはこんなにもお金を使わないものなのかと我ながら感心してしまう程、今の生活は質素だ。
スマホの料金も光熱費も家賃も、何もかもが結婚していた頃とは違う。
『お風呂入れてもいいですか?』
「え、泊まってく気?」
『帰るのめんどくさくなってきました。』
「でも何もないよ。女性用のシャンプーとかそういうの。」
あぁそっかと脱力する椎野さんを不思議な気持ちで眺める。
自宅に女性がいる、それも2人きりで。
なのに緊張もしなければ何の気も遣わない、これはなんなのだろう。
「本当になんで来るのさ。」
『孤独死してほしくないですもん。』
「真顔で変なこと言うなよ。」
ツッコミを入れながらも、冗談にできない自分がいる。
こんなひとりの生活がずっと続くんだと、ことあるごとに考えてしまうのは事実だから。