白い海を辿って。
『まぁ冗談だけど。暇なだけですよ。』
「椎野さんなら相手してくれる人いっぱいいるだろ。」
『バカなこと言うなって言ったのは理瀬さんだから。』
いいでしょ1回くらい。
クリスマスの夜、ここで椎野さんはそう言った。
『惨めな思いするのはやめました。私女友達あんまいないし、暇なんです。』
「ふーん。」
『何その返し。もうちょっと気の利いたこと言ってくださいよ。』
「そういうのは俺に期待しても無駄だから。」
ふふっと笑って、椎野さんはまたスマホを触り始めた。
俺が言ったことをしっかり受け止めていたことには驚いたけれど、女友達があまりいないということには納得していた。
妻も同じタイプだった。
「なんで俺だったんだろうな。」
『え?』
「元妻。椎野さんみたいにモテるタイプだった。でも選んだのは俺。」
ずっと疑問だったことがなんの躊躇いもなくこぼれ出た。
どんな相手とも結婚できたであろう妻が、なぜ俺だったのか。