白い海を辿って。
『感情ないと思ってた理瀬さんがあんな風に想うなんて、きっといい子なんだろうし、今も絶対好きなんだろうなって。』
「いい子はいい子だけど…」
『私、感化されてるんですよ。』
正座ごとぐっと距離を詰めてきた椎野さんに背筋が伸びる。
『理瀬さんに感化されてるんです。好きな子に幸せでいてくれればいいって、やっぱりなかなか思えないことだよ。』
「でも、俺にはそれくらいしか。」
『そんな風に思う理瀬さんが幸せにならないでどうするんですか?』
「どう…って。」
椎野さんはついにソファーに乗ってきて、俺の向かいに正座する。
俺が幸せにならないでって、俺にはもう幸せになることなんて…。
『奪いましょう。』
「は?」
『その子を!後輩から!奪いましょう!』
「…は?」
ちゃんと言われても、言ってることが理解できない。
奪う?滝本さんを?青井くんから?
いやいやいやいや。
そんなこと、俺にできるはずがない。