白い海を辿って。

『私も応援しますから!だから会いに行きましょう!』

「行かない…行けない。」

『もう~!』


両手でそこかしこを叩いてくる椎野さんから必死で身を守る。

椎野さんは知らない。

正月に俺が滝本さんと話したことも、青井くんのことも。



「あんなイケメンには敵わないよ。」

『理瀬さんだって顔はそこそこ格好いいですよ?』

「背も高い。話も上手いし、離婚歴だってない。」

『背と話は負けるだろうけど、離婚歴は関係ないでしょうが!』


関係ないと言えるのは、知らない人だけなんだ。

実際に経験したことのない人だから関係ないと思えるんだ。



「会ったら分かるよ。諦めたくもなることが。」

『じゃあ私がその人を誘惑する!』

「バカなこと言うな。無理だ。」

『失礼な!』


椎野さんは憤慨するが、あの青井くんを見たら無理だということが分かるだろう。

青井くんは、滝本さんを想う気持ちを、好きだという気持ちをあんなにもまっすぐに表現できる。



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