白い海を辿って。
『どれ?まだ?もうちょっと近付けないの?』
「これ以上は無理。」
椎野さんに言われた通り、翌日の仕事終わりに元の職場へ来るはめになった。
教官たちが出入りする場所が見える位置に車を停めているが、教習所自体が少し奥まったところにあるためこれ以上近付くと完全に怪しまれる。
「俺の車は皆知ってるんだから、こんな変なことはしたくないんだけど。」
『あ!』
「え?」
『あれでしょ!』
椎野さんの声に視線を動かすと、確かにそこに青井くんがいた。
変わらず爽やかだが、少し髪型が変わったせいか以前にも増して明るい印象になっている。
『確かにイケメンだわ。ちょっとチャラいけど。』
「おい、何してんだよ。」
隣を見ると椎野さんが双眼鏡を覗いていて、慌てて手を下ろさせる。
まさかそんなものまで持ってきていたとは…。
「もう帰るぞ。すれ違ったらバレる。」
『ねぇ、あの人…。あの人も後輩さんのこと見てない?』
不審気な椎野さんが指差す先を見ると、教習所の陰から青井くんを見ている人がいた。